私のボランティアNO49
(2005 The Australian Open Blind Golf Tournament WA)
「間に合わせ」のボランティア 広瀬寿武
11月26日 NEDLANDS Golf (Club)Course
11月27日 Collier Park Golf (Club)Complex
11月28日 NEDLANDS Golf (Club)Course
上記の三日間、Australia全州及び日本(三人)計 36人のBlind Golfer
が参加して、盛大に行なわれた.
1989年初回で、以来毎年、今回は17回目になる.毎回パ−スが開催地にな
るため、WAのBlind Committeeは大忙し.日本人が参加するので、ただ一
人の日本人ボランティアの私も、知らん顔も出来ず、特に来る日本人に関
わる全てを責任持て「我々は日本語が分からないのだから当然だろう」と、
何と単純な押し付け方.
毎週金曜日はBlind Golfの例会、この例会が中止になった事が無いのと同
じ様に、私がキャディをするM(B1)も休まない所か、この日を楽しみに勇
んでやって来る.雨の日なんか「休んでくれないかな」と思った日が何回
有ったか.専属キャディの私も一年間、一度も休む事は無かった.休めな
いと言う強制はないが、気心の知れた専属キャディが居てMも気楽に楽し
め、集中出来る.「行ってやらなきゃ」Mに頼られている思いに答え様と
する思い上がりと、ただ一人の日本人を見て「日本人は当てにならない」
と思われたくない、実に陳腐な責任感が私をして2年間も休まず頑張らせ
た.Mのキャディを続けながら、ト−ナメントの三カ月前から本格的な準
備が始まった.
日本からの参加者がキャディ同伴だと経費が嵩んで負担になり、参加する
のに二の足を踏んでいるのが現状.
日本の協会から「二人のB1にキャディをお願いしたい」とメ−ルが来た.
日本人の色々な世話、手配等は私一人でも何とか成るが、当日はMのキャ
ディをしなければならない.キャディの掛け持ちは不可能.そこで私のゴ
ルフ好きの仲間に声を掛けたら「OK!協力するよ.でも盲人がどうやっ
てボ−ルを打つんだ?」未経験に対する漠然とした不安と共に、快く引き
受けてくれた.盲人に直接関わった経験のない人(大多数)は盲人ゴルフ
を想像出来ないのは、至極当然の事.
盲人に対するボランティアをするためには、数週間のlessonとtraining、
適性審査を受けなければならない.盲人と奉仕人相互で信頼し合える関係
を築くための必要条件.粗忽な私はMの手を引いて2年にもなるのに、今
だに受けた訓練の結果の成果に疑問符が付く.自分なりに気配りをしてい
るつもりでも、Mの目になる困難さを常に感じて苦笑すること絶えず.
不適性なのではと、いい加減で不注意な我が身を知りながらのボランティア
ト−ナメントのためのテンポラリ−盲人ボランティア、さてどうしたもの
かと「間に合わせ」故に悩んだ.
盲人に関わる、そして盲人ゴルフの細かなル−ル、テクニック、考え方等々
をどのように伝えたら良いのか.
どんなに名文名句で表現したところで体験無くして理解は難しい.盲人達
の手を引き温もりを感じ、心の細部に直接触れて、お互いの理解が生きる.
しかし、奉仕する人達の都合と時間、盲人に直接接する機会等々、プラン
を練れば練るほど、物理的に難しく不可能に近い.
絵に書いた餅を現実にするには?
世の中、良くしたもので、朋友、盟友?のK女史から女房に電話が来た.
タイミング抜群!私の頭は冴え渡り、突然、名案が浮かんだ.
K女史はボランティアの会の責任者でも有り、最近私もその会にKを通じ
て数回関わった事も有り、何となく会の内情も感じていた.
このボランティアの会のメンバ−に盲人ボランティアを経験させたら、ボ
ランティアに対する新鮮で刺激的な「一つ」がプラスされるのではないか.
視野も広がり「ボランティアの会」そのものにも精気が注入されるだろう.
「会」と「メンバ−」が私のボランティアに関わる事で、何かを得る事が
出来ると、私は勝手に確信をした.K女史の気持ちと私の確信が一線上で
交わり、事が進行する運びになり、協力を快く受けてくれた私の仲間達に
は丁重にお断わりをした.
会のメンバ−、知人共で老若男女11人のボランティア.
日本人(B1)2人に、一日 各1人ずつのキャディ、1人のカ−トを引く人.
通常(このト−ナメントでも)三日間の間、Playerに専属キャディ1人.
キャディは盲人の手を引きカ−トも引く.私の場合もMの専属、彼の手を
引きカ−トも引き、バンカ−の手入れからトイレ、飲食、シャワ−ル−ム
での着替え、ゴルフ道具の手配等々、全てキャディの仕事.
「専属」か「間に合わせ」かでキャディの奉仕行動、仕事内容が違うのは
仕方がない.私は「間に合わせ」の物理的な現状をCommitteeに説明、説得
をして了解を得た.「もし了解してくれないのなら、責任が持てないから
役員を辞退する」
付き添い諸々で、日本人7人.私の助けが無ければ進行に支障が生じること
承知の上での脅かし.兎に角、思い通りのスタ−ト.
さて「Lesson」でもなく「Training」でもない、それらしきもの.
全員、盲人と関わるのは未経験.まず、見て知ってもらい、感じてもらわ
なかれば、どうにもならない.
毎週金曜日の例会に夫々の都合に合せて来てもらい、私のボランティアを
見学?してもらい、少しでも知識を得てもらう.だが、それすら都合が付
かないのか、思うように集まらない.出来たら2〜3回は見てほしいが、
結果的には1人を除いて1回だけは見てもらった.
コンペ中はMも真剣勝負、私も中途半端なキャディは出来ない.私の横に
付いて、私の一挙手一投足を見て未知の部分を補ってもらう.結局は全く
の未経験、未知な人にBlindを配置し、経験体験してもらう許可は出ないの
で、説明はコンペの前後と私の書いたペ−パ−のみ.これで全部.
「間に合わせ」のための「間に合わせ」の事情.
専属キャディがする内容と違い、コ−ス上でのプレイをサポ−トるボラン
ティア.「正確な距離」「正確な方向」「詳しいロケ−ション」を主体に
インフォメ−ションを与え、事故の無い配慮を心がけてもらう.
ゴルフをするのはあくまでもPlayer、キャディはコ−チではない.
だが、盲目なのです.キャディは盲人の目で有り、足なのです.
目も足もキャディの心で動きます.思い遣りの心が有れば目を通して、足
の動きを通して、優しく相手に伝わります.
「間に合わせ」のボランティアほど、奉仕人の「心」が「一義的」と言え
るでしょう.
ゴルフの出来、不出来は時の運ぐらいに思い、共に楽しむ工夫を念頭に、
緊張しないのが、盲人ゴルフのキャディの「こつ」
本当に、ほんとうに、たまたま、ナイスショットが有ったり、パットが吸
い込まれるようにホ−ルインしたら、キャディは飛び跳ね踊り出したいほ
ど嬉しい.私はMの手を握り抱きしめてやる.
たった一回の感激で、18ホ−ル全体を支配する嬉しさを表現する.それほ
どブラインドゴルフは(特にB1)難しい事に挑戦している.同時にボラ
ンティアもプレイヤ−と心が一体化しているから、自然に感動が満ち溢れ
る.この時ボランティアは沢山の「何か」を得る.
体験もなく不安を持つ11人に、私が伝えた一言、私のボランティアの心念.
後に記載する感想文の中に、私のキャディ振りや、アドバイス等から夫々
の受け止め方をして苦心惨憺している様子が書いて有るが、だからこそ得
るものが有り、快さが記憶に残ったのだろう.
11人全員、何と素晴らしいボランティアをしてくれたことか.
心の豊かさを静かに、そして温かく表現して、2人の日本人Playerと一体化
した.共に楽しみ、共に熱中して心の感激を共有した.
「そうなんです.どんなボランティアでも、それをするのは人の心なんです」
今回日本から参加したPlayer、関係者全員が、11人の「心」を大切に包装し
て、日本に持ち帰りました.
11人の心に深く感謝した「私のボランティア」
B1=全盲(因にB2〜B3は視力障害)
ボランティアに参加してくれた方から、感想文が寄せられたので、そのま
ま記載します.(実名は承諾済)
失礼ながら、説明不足だった部分には補足をさせていただき、私の感想も
序でに.
ブラインド・ゴルフ ボランティア感想文
ボランティア日記TOPに戻る
|