私のボランティアNO86   広瀬寿武
(持ちつ持たれつ)

3月に入り今年度のブラインド協会主催(BAWA)の活動が始動した。
例年通り、偉そうな役人やらスポンサー、医療関係者等が顔を出すパーティ。
私は席上、2008年度の最優秀ボランティアサポーターとしてBAWAより、メダル、表彰状を受賞。
暮れに表彰されたセレモニィ―が、ブラインドゴルファー、キャディが全員集まった、初日のパーティで再度、ご丁寧な事だと思うが、晴れがましいのだから、と、擽ったい気持ちを押さえてのお立ち台。
毎年一人を選考するらしいが、今年で4年続いての受賞に「5年目も受賞できるようにサポートして下さい」と言われた。
何時もそうだが「いったい何をどのように。特別、何かを考えてボランティアをしていることなんか全くない」私のボランティア。
そこに全盲の「M」がいるから、全盲だから、おっちょこちょいの私が自分で自分を戒めないと、Mが困るし、怪我をする。ただそれだけの事。

ゴルフの後、一緒にシャワーを浴びることがある。一緒だってMは全盲。私の裸なんか見えやしないが、それより脱いだM のパンツをつまんで、ロッカに入れる仕種を見られはしないかと、罪悪感を覚える。
誰が洗濯をするのか知れないが、指先で摘みたくなる汚れ。見えないことは、健常者の感覚での汚れを意識しないのか、長年Mをサポートしているが、全盲者の頭の中は理解しようがない。
仕方の無い、どうにも出来ないこと、と同時に、同情だとか貶すべき特別な感情も無い。
一人暮らし、汚れた物が溜まるとコインランドリーで洗濯をすると。
「どうやってするのかな?」と思うだけ。
そう、日常の生活をふと、「どうやって」と思うだけ。
盲目と言う現実は常識や理屈では計り知れない世界なのだ、と、それだけを私の身体は分かってきたのかもしれない。
一緒に行動すると言う事は、Mが私の腕を頼りにし、自分を私に任せている事。気持ちが重くなる、体の重量感も私に圧し掛かる、心身共に重圧を覚える時は何度も有るが、その日が終わると忘れてしまう。
そして、今年も毎週1回、Mとの珍道中が続くことは確かだ。
受けたメダルをMに握らせ、「Mのお陰だよ」「トシ、よかったな」
私はMを私なりにサポート出来る、それをMは期待している。
「持ちつ持たれつ」
そうなんです、私のボランティアは何時も「持ちつ持たれつ」の感覚の中。
気負ったり、自慢出来る様な特別な事なんか全く無い、ただ、淡々とした
持たれ合い。長く続けるための条件なのかも。

因みに、Mの初日のスコアー
「14」
最低の出来。Mも面白くなかったのか、冗談も出ない。
キャディの私、顔には出さぬが、腹の中は我慢の一字。
Blind GolfはSTABLFORD
MのHCは30

Mの一年間の平均は22~25

こんな日は家に帰り、妻に愚痴を言う。
それを聞いている振りをしながら、私の飯の支度をする。
妻のボランティア。


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