私のボランティア    NO8         広瀬寿武

 

 十二月五日,O’CのX’masパ−ティ.

コ−ルなでしこ(日本人のコ−ラスグル−プ)の日程,都合に合わせ少々早くなった.

なでしこの歌のプレゼントは今年で二年目になる.

二週間も前から準備を始めツリ−はメンバ−の気持ちが積み重なって,日に日に豪華に

なる.

「トシ,歌の後,メンバ−達と一緒に食事を楽しんでほしい」O’Cの意は妻を通して

伝える.「メンバ−って精神病の人達でしょう」ふと,形にならない不安を覚えた人も

いたかも知れないが,この数年日本で起きた不幸な事件を思うと,それは至極もっとも

な事.もう二年以上肩を組,手を繋ぎ,アイスクリ−ムを嘗め,落としたハンバ−ガ−

の中身を拾い,時には食べる,そして笑い涙さえ隠さない私の前に汚れきったハンカチ

を置く彼等.彼等が病気で有る事を忘れ様と無理に努めた事は無い.

だが病気を意識する事は常に忘れている.

「Mのコンディションが悪い,Drに連絡しよう」ソ−シャルワ−カ−の相談事を耳に

しても気にならない.ブツブツ言うMの側にいると彼の気持ちが何となく感じる.

「OK,M,昼めしの味見をしてくれないか」十分近く私の側で洗い物,片づけを手伝い

「TVを見る」と別室へ.「トシ,Dr要らずだな」三十そこそこのワ−カ−と六十五

を過ぎた私,年の功の成せる技を一寸披露しただけ.だが社会一般から見ればやはり

何処かが違う.だからこそO’Cの存在する意義がある.

私に批判するだけの知識は無いが,日本社会でこのような人達の多くは社会の目から,

人の目から隠された,或いは隠れた所で人間の価値観を無視されているような気がして

ならない.

O’Cは,ともすれば一人孤独になりがちなメンバ−を共に過ごす時間の中で,心の通

う安心を感じさせる重要な役割を果たしている.

 

なでしこが彼等皆が知っているクリスマスソング歌う.

隅の方で俯いていたPが喉の奥で歌い,隣でRの足がリズムを刻む.空気の中に皆の

和む音色が沈む.

なでしこの美女の前に立ち共に歌い,共に身体を揺らし,そして聞き入る私の仲間達の

メンバ−の顔を見ていると涙を押さえられない感激.

「よかった!歌ってもらって良かった.なでしこの皆さん,ありがとう」

メンバ−となでしこの美人が入り混じっての食事.

オ−ナ−のMrsO’Connor,政府のサポ−タ−をはじめ,センタ−全員で感謝

の食事を振る舞う.妻と娘の助けを借り,二日掛かりで料理した約百人分のカレ−

も好評で万々歳.(釜三つの内の一つがめっこだったのを除けば)

なでしこが帰った後の柔らかな寂しさ「今度何時来るんだ」Gが聞く.

「又直ぐ来るよ」「そうか,日本の歌が良かった」さくらさくら.

「本当に分かったのかな?」

 

後日なでしこの数人が寄せてくれた感想を簡単に紹介しよう.

 

Xマスキャロルを喜んで聞いて下さり嬉しく感謝申し上げます

                                        桂 昭子

皆さんと一緒に食べたご馳走は,おいしく楽しい思いをしました.

又呼んでいただいたら喜んだ参加したい.                               

                                        徳重アケミ

 

施設の皆様の前で歌を披露出来て感謝お礼をします.

施設の方々と一緒になって優しく接していたトシさん,スタッフの姿を拝見して,

ボランティアの難しさ,大切さ,必要性を改めて認識させられた意義のある一日でした.

                                        田代卓

トシさんが「僕はボランティアをしているんだよ」と言う意識がなく,

自然体で接している様子を見て頭の下がる思いで感銘いたしました.

                                        田代玲子

 

私のボランティアを支えてくれる多くの意の有る皆さん本当に有り難う.

妻と娘にも有り難うと言いたい.

 この感謝を忘れずに!

 

八日はCFのX’ms.抗ガン剤の苦しみ,家族と離れている寂しさを慰める事が

出来るか.鶴を折,プレゼントを包みながら病院へ連れ,帰る人達の顔を想う.

 

 (O’Cは精神病疾患を持つ人のDaycare        Center)

 (CFはCancer        Foundation)

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