私のボランティアNO73 広瀬寿武
(訪問者達は天使)
毎年暮れになると、私のボランティアの一つにボランティア集団が来てくれ、
メンバー達を楽しませてくれる。
又、関わっていた老人ホームでも楽しみにしている様子を聞くと、良かったなと思う。
イベントを企画してから続いているのは嬉しい限りだ。
何年前になるか忘れたが、日本人女性コーラスグループの出演を企画交渉して、協力を得られ、今尚、訪れているのが老人達の楽しみの一つになっていると、たまに会うマネージャに言われる。有難いとの言葉を素直に受け取る。
O’Cは今年で3回目。
「トシ、今年のX’masに、ジャパニーズレディスは来ないのか?」
精神障害の病気を抱えるメンバーの何人かは、O’Cを大勢で訪れたコーラスレディスが歌った後、共に食事をしながら交わった一時を覚えている。
精神障害者のケアーと言うだけで、なかなかボランティアも集まらない所に、それも日本人女性コーラスがボランティアで歌い、共に遊んで時間を過ごしてくれる、こんな事は私が関わって8年以上になるが、彼女達以外は皆無。
「メンバーの所へ来てくれる」これだけでメンバーにとっては特別な事なのだ。
「歌声」を全員が聞き入っている分けではないが、全員が日本人女性グループに目を向け、心を寄せて和んでいる。
ここでの長い年月、共に遊び語り戯れ、メンバー達の気持ちが読み取れるようになったので、彼等も私を友にする。
メンバー達の「歌声を見ながら」和む顔は、私のボランティアの醍醐味。
感激が私の胸を打つ。
ここでの私のボランティアは、彼等を通常の社会生活の中に連れ出し、彼等だけでは馴染めない、行かない、やらない、事に挑戦する助けが中心になるが、決して特別の事ではない。
人の集まる所を選び、散歩に、喫茶に、泳ぎに、ゴルフに、ボーリングに等々、我々が毎日、当たり前に行動している事をする。だが、メンバーにとっては一人でその中に入り、行動をする事は無い。
O’Cに来て仲間の顔を見ながら何となく一日を過ごすのが、精神的に安定する。
O’Cはメンバー達をなるべく早く、通常の日常生活に復帰させる目的もあり、公的援助を受けている。政府はメンバーには掛かる福祉資金の予算を減らしたいのだが。
私が始めた8年前、O’Cは2箇所だったが、今は5箇所になり、メンバーが増える一方なのに、彼等の生活援助資金も含め、医療費が増える現状を体感している私には、政府予算の削除は厳しく感じる。毎年、福祉予算への配分を問題にしている政府でも頭の痛い事かもしれないが。
何処のO’Cも自慢の出来るほど立派な施設ではないと言うより、ここもあそこも、お金を掛け、修理したら見栄えも良くなるのにと、訪れる人は思うだろうが、そこまでO’Cの予算も行き届かない。
こんな所へ、日本の天使達が歌と笑顔を運んでくれる。
メンバー達には金員以上の高価なプレゼント。
ぼろ車を運転しながら、Rockinghamから駆けつけて来たMrs O’さんが、80歳を遥かに越えた顔の皺に笑みを一杯溜め「有難う、有難う」とコーラスグループに礼を述べた。
「Mrs O’さんは、いったい誰のために心を込めて礼を言うのだろう」
私もコーラスボランティアの天使達に、私なりの言葉をもって礼を述べたが、Mrs O’さんの情熱には及ばない。
だが、私はこのボランティアが好きだ。集まって来るメンバー達、皆が好きだ。てこずらされ、文句を言うが、行けない日が有ると、一日中、気になる。
「トシ、今日も有難う」と、Mrs O’さんの凛とした顔を見るのが好きだ。
「hi! Toshi」とメンバー達の親密の情感が溢れている声を聞くのが好きだ。
好きだから楽しい。
私の何処かに置き忘れていた「人間愛のかけら」。
「ボランティア」の名前なんか無関係。
愛情を感じるから出来ると、勝手に思うことをやっているだけ。
今年一年、一緒に感じ合えた喜び。
「また、来年も同じ事をしているのかな?」
(2007年12月31日)
E-mail: toshiyok@iinet.net.au
O’C:精神障害者のためのDay Care Centre(法人)
Mrs O’:O’Cの創設者婦人(オコ―ナさん)
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