私のボランティアNO71 広瀬寿武
(ボランティアの疲れなんか)
10月23日~26日までThe WA Blind Golf Association主催によるAustralian Openが行われ、Welcome
PartyからGood-bye partyと一週間の日程。
妻が日本で5週間の漂流中、私にとっては準備から終了までの約10日間、時間を潰すと言うより、一日の時間と行動の配分にてんやわんや。
先ず、自分の朝の食事は?昼は?パーティには何を着ていくか、持ち物から場所の確認、翌日の試合の準備、ユニホームからズボン、5日間続く試合のため一枚しかないユニホームの洗濯、時間に遅れない為の配慮等々、家の中は台所も含め脱ぎ放題、食い散らかし。
飼い猫ミーちゃんも戸惑うごみの山。
今回は全オーストラリアから約40人の参加、日本からも3人プラス、キャディーと役員、吉川女史プロ等数人のプロが参加協力、恒例として私が日本人担当役員。
それに2日間、私はMのキャディー。
トーナメントに於ける世話や役員の仕事は苦にならないが、その間の自分自身の世話には、段取りも含め収拾がつかず、妻の居ない不便さを痛感した。
どんな仕事にしろ、出掛ける前の気持ちの整理がその日を左右する事がある。
役員での仕事は全員の協力で行うが、キャディーは常に一対一、私自身の気持ちが重要になる。
初日はコースと英語を解さない為に日本人「K氏」のキャディー。
K氏とは一昨年行われた日本での世界大会を含め3回、親しく接していたので、私のチグハグな気持ちを日本語で紛らわす事が出来、試合前の互いの気持ちを理解し合えることが出来た。
その幸いは、B1のポジションでK氏が優勝。キャディーの私も表彰されトロフィーを頭上高く上げ、K氏の大きなトロフィーと並べ、共に笑った。
K氏、20数年前に交通事故で両眼球破裂、視力なし。
彼の積極的に生きる姿に、一つ、形に写らないもっともっと大きなトロフィーを与える事が出来た私の幸せな喜びは、私のボランティアのお陰だ。
「女房よ、俺は勝って気侭な日々を、結構楽しんでいるよ」と私を心配しメールをくれた妻に負け惜しみを隠した一言。
翌日はMのキャディー、K氏とは同じ組。K氏にアドバイスは出来ないし、Mを勝たす為には見て見ぬ振りを貫いた。
K氏のキャディーの奥さんも私を振り返りながら、夫婦愛の篭ったアドバイス。
結局、MがB1ポジションで最高得点。だが、翌日そのMが興奮したのか脳障害の症状が再発、救急車で病院へ。
「彼はついていないな、楽々優勝なのに」
朝、スタート前に見舞ったが、暫く安静と言われ「早く元気になれよ」とキャディーの私は祈りを送った。
他のボランティア、精神障害者、がん患者、老人ケアーの場でも緊急の経験は多々あり、だが、専門家ではないボランティアの出来る範囲は決まっているので、祈るしかない。
(どんな場合でも専門家でもないボランティア従事者が、不用意に手出しをしてはならないのが鉄則)
金、土曜日と強風雨、気温も下がり、気の毒に思ったが、自然の神を恨む分けにも行かず、我慢のゴルフになった。
吉川女子プロ達が、見せ場を作り試合を面白くしてくれ観客、役員、参加者を楽しませてくれたので、悪天候を一寸だけ忘れた一幕に感謝を込め、全行程が無事終了。
終わった後の2日間はサウナに入り、寝転がっての骨休め。「疲れた」の一言。
一週休んだO’Cから「明日は来てくれ」の電話。
「はいよ」
「タイレストランへ来い」とチャイニーズの友人達と騒いでいるうちに疲れは吹っ飛んだ、都合のよい私の疲れ。
結局はボランティアでの疲れは、ボランティアに従事しながら何時の間にか消えてしまう。
女房の帰ってくるまでには「この散らかりを何とかしなければ」と思うとボランティアの疲れなんか、なんのその。
私のボランティアとはこんなものなのだ。
B1:全く視力が無い人。盲人の視力の程度を記号で表記する。
O'C:精神障害者のケアーセンター(法人)
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