私のボランティアNO67
(小さな出来事) 広瀬寿武
「Mがパー3のホールでバーディー」
キャディの私はボールの転がりに「これは入るぞ」と既にガッツポーズ。
全盲のMは聞こえる片耳でボールが入る「コトン」の響きに声を上げた。
回りからも「ナイスバーディー」
二人は嬉しいのなんの、次のホール上でも喜びの気持ちが高鳴ったまま治まらず、結局ボギーどころかダブルパーこと、4オーバー。
だが一寸も痛くも痒くも無い。
たった一回のバーディーが、その日一日を幸せにした。
それに比べて、前日のコンペに出た私のゴルフはバーディーどころかパーが2つに、後はボギーにダブルボギーと、惨憺たるもの。
私は暦とした目明きなのですよ。
因みに私のハンディー18、Mは15(ブラインド規定)。
その週の土曜日、WAの新聞、ゴルフ欄にマッチプレイで優勝したMと私の名前が、小さく記載された。
それから1週間もの間、ブラインドゴルフのボランティアのお陰で晩酌の酔いを十倍、幸せなものにしてくれた。
もしかして明日は雨かもしれない。
「傘の使えない、ずぶ濡れのゴルフは嫌だな」
「そんな事を言うなよ」
「また、バーディーが有るかも」
怠慢な私の腹の中の会話は、毎回同じ事を繰り返す。
ボランティアとは楽しくもあり、楽しくもなし。
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