私のボランティアNO62 広瀬 寿武
(新年初所感)

日本とは気分的に全く違う、気候も反対の真夏に雑煮を食べて、酒でのお屠
蘇より冷たいビールの方が喉越しの良いパースの正月。
それでも我が家では毎年恒例の年越し大パーティに続き、正月元旦も人を招
いて正月気分を楽しむ。
女房は暮れの忙しい合間を見つけて深夜まで掛かりながら、日本の正月料理
に少しでも近ずけようと、お重まで揃え、日本から仕入れてきた僅かな材料
を使って料理作りに勤しむ。黒豆からごまめ、栗きんとんになます、五目煮
に昆布巻きと出来栄えを私に賞味させるだけでは物足りないらしく、多くの
人を招いて、ほんの一寸自慢がしたいらしいのだろうと、私は女房の魂胆に
舌打ちをしながらも、協力する。
お陰で、あまり飲めない酒を気分で飲んでしまい、苦しい深呼吸をしながら、
寝正月。
2日からボランティアが始まるので酒の臭気を完全に消しておかなければな
らない。
O’Cのメンバーにとってクリスマス、正月休みは迷惑な話。休み明けを待っ
ている。
「Happy New Year」の簡単な挨拶の他は全く普段と変わらず、新年だと言う
改まった感覚はどこにもない。
医療系の特に治療を受けている人達とサポートするボランティアには体感的
な変化が無いのは当然なこと。でも凡夫な私の内部感覚には日本人的DNAが
抜け切れず、何となく厳かな正月気分を表現したくなりメンバー達に笑われ
るが、そんな彼等も違和感無く私と握手をする。
人と人が何処かで、何時の間にか、理屈抜きで感じ合い、理解する、こんな
ボランティアがとても安らぐ。
「私のボランティア」の記事を読んでコンタクトして来る、ボランティア志
望の若い男女が年間相当数いる。
ボランティアの経験はないが。
英語が分からないが。(外国で経験をしたい)
期間的(数回か数週)な問題。
報酬を得たいが。等々。
中には経験者、英語理解者は居るが圧倒的に上記の条件を持つ人達。
ボランティア経験の要らない条件で出来るところは多く有るが、英語の問題
で独りの参加が難しいか、本人が積極的にならないケース。
期間的に数回、1~2週間との希望は受け入れ側でも、教えたり等の手間が掛か
り、望まれないケース。
報酬を期待しての(滞在費の足しに)ボランティアは基本的な考え違い。

面接をして適性が有り、情熱が本物の人(英語の理解度、期間に関係なく)に
は出来るだけ経験をさせて上げようと、私なりの考えで協力して来た。
私のボランティアの中で、私が責任を持つ形で、受け入れ側に依頼し、理解を
得ての状況下でのボランティア助手。色々な条件の下で何とか希望を叶えさせ
ようとするには、私と共に行動するのが手っ取り早い。
私のボランティアは一定時間の講習を受け、適性と判断されなければ、採用さ
れないので、私を信頼しての受け入れ許可。
太郎君は大卒の後、2年ほど民間会社に居たが学生時代の「ライフセービング」
活動が忘れられず「その先進国でより高度な技術を身に付けたい、余暇の時間
をボランティアに当てたい」と。面接してみるとスポーツマンらしく好青年。
O’CとCFで週2日私の助手をして半年。分からぬ英語で苦労しながら、ライフ
セーブの日々を人々に手まね交えて楽しそうに話す姿と真面目な責任感は、多く
の患者に好感を持たれた。
日本へ帰り某県警のレスキュー隊に就職が決まり、何回か手紙で近況の報告は
あったが、ここ1年、私のずぼらで音信が途絶えていた。
年賀状に相応しくない純白の婚礼衣装が浮き立つ葉書に「昨12月結婚しました」
女房は息子代わりに何回か持成していたので、懐かしさも加わり
「幸せそうな写真、良かったね」
この温もりが滲んでいる一枚の葉書が、食卓に並んだ正月料理を一段と豪華に
見栄え、そして本当に美味く食べた今年の正月。
私のボランティアの中には、遠く離れた距離が有っても共に分かち合う人生も
あるんだなと。

O’C:精神障害を持つ人のケアーセンター
CF:がん患者をサポートする政府も関連する団体


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