私のボランティア         NO4  広瀬寿武

 
  秋と言っても日本の様に季節の変わり目が無い.大まかに言えば夏と冬しかない.

六月から八月迄が冬で雨季.五分ほどの風を巻いた激しい雨の後,豪雨の余韻など

忘れた様に雲の割れ目から青空が顔を出す.

 一年中で雨の降るのはこの三カ月だけ.後は全く雨の無い乾燥した月日が続くので,

命あるものは雨の恵みを大切にする.

 こう書くとアフリカの大地を想像するかも知れないが,私が住んで一,二年はそん

な実感が本当に有った.約七カ月,一滴の雨も降らずどうなるのかと心配した.

気遣いながらスプリンクラ−の水を出したが,砂の地べたに「あっ」と言う間に消

えてしまう.だが,翌朝になると芝目が息を吹き替えし,夏の花花が色を誇る.

 

 六月最後の私の勤務日?CFの芝生は昨夜の雨で緑鮮やかな色に染め,バラの大輪も

一段と華やいで見える.ロッジの静かさが柔らかく浮かんで何事も無い様に映る.

 

 レセプションで予定を確認する.五週受け持って,まだ数週の治療が必要だと言って

いたPの名が無いので尋ねると「先週木曜日の夜,様態が悪くなり月曜日にオペをし

たが心配な状態が続いている」 魚釣の成果を冗談交えて楽しそうに聞かせてくれた

爺さん.元気になってくれと祈る.

 誰もが心に不安を抱え,それでも経過が良い方向へ進む事を願って苦しい治療をして

いるが,結果の善し悪しは神のみぞ知る.

 ボランティアとして接していると家族のような情を覚えバッドニュ−スはとても辛い.

 

 高い青空に小鳥が遊ぶ夏,雨に肌寒さを感じる冬が過ぎる中で,何度,辛く寂しい体

験をしただろうか.その度にもっと気持の楽な,義務と責任感に縛られない

ボランティアに変わろうかと思ったが「トシ,明日はスタ−ト九時,八人,お願い」

レセプションからの連絡に「OK」やっぱり止められない.

格好を付けている訳ではない.辛い日,義務感と怠慢な無責任感と葛藤する日.

「不安と苦しさに耐えて私を待つ人がいる,行かなければ!」

 

 FCの門を抜け正面のスロ−プから,ガラスドアの中に佇む顔.車を止めると自動ドア

が開き「トシ,おはよう,How      are      you」  

「ああ,来て良かった」単純に心が和む.

 こんなボランティアが有っても良いいじゃないか.

 

 「トシ,覚えているか,俺を」半年前に帰る時「二度と逢わないないのが幸せなんだ.

永遠にBye bye」と言ったN.

強がりとはにかみが重なってよけいに辛さが滲んで感じる.返事に詰まる私を助ける

ように「人生ままならずだ.又お願いするよ」

「OK,こんど別れる時は,私がシャンペンを買うわ」

 

 CFロッジの庭が夏の絵になる頃には,シャンペンの蓋が勢い良く飛んで行くのを願

う.そして私もまだず−と私のボランティアが続いているだろうと思う.

 

 揺れる気持を騙したり,慰めたり,でも楽しいんだと納得もしている. 

 

 来週,水曜日O’Cではロ−カル飛行場で遊覧飛行をする予定. 

  楽しみだ!    楽しみだ!

 

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