私のボランティアNO36
(口先の同情と実の有る心) 広瀬 寿武
自分ではイメ−ジ通り体を動かしていると思っているのに、よく躓いた
り、ぶつかる筈の無い所に思いっきり頭をぶつけ、腹を立てて妻に八つ当
たりして、しなくてもいい喧嘩をする.当然負ける喧嘩、腹立たしさは倍
に膨らむ.その後の飯は胃に納まらず、酒はただただ苦い.
年齢と共に老体化する肉体と頭の回転は、嫌みったらしい舌の回転とは必
ずしも比例しない.
「老人の嫌み口は嫌われるよ」と.
分かっている、その通りだ.が、思うようにならない我が身の悔しさを持
て余した挙げ句、嫌われる損な人生の通過点を皮肉と笑ってばかりいられ
ない昨日今日.
年々衰退していく全体的能力を感じながらのボランティア、特に私のボラ
ンティアは体力と細心の神経が必要なため、能力の限界を超えていると思
う事もしばしば有る.しかし、事に従事する以上は責任が有り、常に体力
と神経を集中させる事が要求され、衰退老体の挑戦そのものでも有る.
私の奢り、見栄かも知れないが、まだまだ身内に挑戦する炎が燃え熱くな
る力が有ると思っている.炎の光が絶え消えた時、私のボランティアも終
わりになるんだろうと老体に重ねて思う.
Blind golfのMが一カ月Sydneyへ行った為、暫しの休みと内心ほっとしてい
た.が、どっこいそうは行かないのが世の常.
「 トシ、金曜日には何時もの通り来てくれないか?」咄嗟に断わりの言葉
が出なかった.悲しいかな代わりに出た言葉が「OK」
何とか持ちそうな空模様.
「トシ、今日はEのキャディを頼む」品の有る話し方をする五十少し過ぎ
た全盲のE婦人とは、挨拶を交わす程度で殆ど知らない.でも毎回出て来
るのだからゴルフが好きなのだろう.キャディのPが風邪で休み急遽私が
代役.上品で一寸チャ−ミング、話好きな女性と腕を深く組、体を寄せ合
いながらゴルフコ−スを揺れ歩く.何と気分の良いことか!
恋心の香りが芝生の上を撫ぜて行くような.
「ゴルフなんてどうでもいいや」不純な想いとは裏腹にマッチゲ−ムに勝
ち、スコアも上出来.
ゴルフが終わると全員集まり,お茶とクッキ−で和気相合の表彰会.
Pと腕を組み賞品を貰いに行く私の気持ちは,ボランティアでここに居る
事なんか忘れて,Pの人生のほんの一点だが,その中に溶けて共に生きて
いた.
無償の奉仕をして有償の幸せを得る贅沢.
「同情するうなら,金をくれ」一時の流行語を思い出す.
口先の同情より実の有る心をくれと,偽善と真意を鋭く突いている言葉が
私の心を抉る.
Pと共に楽しんだボランティア,私に出来るのならと参加しているボラン
ティアだが、実の有る真意を持って接しているだろうか.
人の口を借りれば「あいつがボランティアをやるなんて.腹と行動が違う
代表だ」
その通りだと思う.「実の有る心を・・」持ち合わせていない鈍感な私の
腹で、どんな行動をとった所で偽善の処作なのだから、人の口を閉ざすの
は難しい.人の口がどう有れ、元々無能な私が「実の有る心を」持ってい
るか、いないかと意識する事なんか出きっこない.ボランティアをしてい
る一瞬一瞬を事故が無く、相手が出来るだけ豊かな気持ちになってくれる
様にと、それだけに頭と体を使う.それしか出来ないと言った方が良いか
も知れない.これが私のボランティア.
「同情するなら、金をくれ」
ボランティアに関わって始めて、その痛烈で深い言葉の響きを感じ取れた.
だが、感じ取れただけで、その先へのめり込めない不甲斐なさ.
今月のO’Cの特別行事はパ−ス動物園、40人程の見物、散歩の引率.
雨が降らない事を祈る.
Mercy Careは7人の誕生パ−ティ.今唄の特別レッスンを受けているので
(このために)楽しいパ−ティにしようと、心が弾む.
Blind Golf来月私のパ−トナ−Mが帰って来る.
そして、他のクラブと他流試合.どんな事になるのか、これ又興味津々.
私の腹とは無関係に一週間の時は、あっという間に過ぎてしまう.
ボランティアの日が無ければ、毎週、何をしているのかなと、意味もない
事を思って「馬鹿」と我が身を笑う.
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