私のボランティアNO29
(何となく挑戦.盲人の五感) 広瀬寿武
「この道より我を生かす道なし、 」
人生肯定、人間信頼を唱えた作家、武者小路実篤を思うと、何と我が道の頼
りなさ.何時も「何となく」で、道と言うには程遠いい.
そんな道の中で狼狽えながらも、私の目は正常に働き見たいと思う視界を自
由に、時には好奇心を露にして見る事が出来る.
「目で見る」当たり前の事実に疑問を持った事は無い.
「見えない」と言う現象を意識して想像した事も無い.
そう言えば街並みの何処かで、いや、電車の乗降口のポ−ルに掴り、右手に
白いステッキを持っていたのを、そうだ、子供に手を引かれ時々我が家に来
たマサ−ジ師.脳の隅を突けば盲人のおぼろな姿が浮かんで来る.
永遠に我が道と成りえない私のボランティアに、成り行きで盲人との関わり
が出来た.盲人を意識したことの無い私の日々、無責任も甚だしいと思わず
苦笑したくなる.
だが、面白い.と言えば盲人に失礼だが、底無しの馬鹿さ加減を丸出しにす
るほど、盲人の五感と六感に驚嘆した.私が無知で馬鹿だからこそ、その驚
嘆は新鮮に私の五感を刺激する.教えられ自分の感覚の中に馴染む未知の経
験(大げさ)は私の好奇心を超えた面白さ.
分厚い書類と共に盲人に対する解説書、ボランティアの心構えの講義書が郵
送され、同封の手紙には通読して出来るだけ理解して置く事と有る.
「何だこれは!読めっかこんなもん」
「読まなきゃ駄目なら、行くの、止めるかな」
解からない単語(専門用語が多い)はふっとばし、斜めに読んで斜めに理解
をする私の得意技.
Association for the Blind of WAは
Victoria Parkの駅前、その一角に古い二階建てと比較的新し
く見えるL字方の平屋.玄関周りは何処にも華やかさが無い、と言うより当
たり前だが、盲人の為のみにお金が使われているのを十分に感じる.
内部には盲人をサ−ビスする為に立上げた、今年で九十年になる歴史の精神
が優しく満ちている.
建物の入り口で良く見かける名誉名声を誇示する、誇らしげな物品が見当た
らない盲人への思い遣りに、一見、粗末にすら見える施設の空間全体に安ら
ぎを満たして安心感を覚える.
今回のクラスには九人の参加.朝9〜4時までの5回コ−ス.
男性3(オ−ジ−に私)、女性6人(インディアン、シンガポ−ル中国、
ブラジル、ポ−ランド、オ−ジ−).
日本人の参加は始めてだ、どうしてなのかと聞かれたが、何と返事をしたも
んか、ただ、肩を窄めただけ.
何時もそうだが、この講習、特に分厚いペ−パ−の授業?は私にとって苦痛
の一つ.
ボランティアについての長々とした説明には、時折出る欠伸を噛み締め、我
慢の連続.試練も私のボランティアの内と秒針の進む鈍さを追う.
だが、盲人センタ−の講習は今までと全く違い、この後直ぐ新鮮で興味深い
体験をすることになる.
(この項、次回に続く)
十一月も後半になるとショッピングセンタ−や街のいたる所で、X’mas
の近ずきを演出している.私のボランティア関係もその日程が決まり、準備
が始まった.
CFでは(ドライバ−は辞したが、ガン疾病者をサポ−トする部門に関わっ
ている)毎年この次期に行なわれる恒例のCraft fairに、数千人
を呼び込み収益を上げようと、大忙しの日々.
十二月初旬のまだ陽の沈まない暑い午後、ガン治療のために家族と離れ、
WA各地から来ている人達を励ますX’masガ−デンパティ−.
我々ボランティアとスタッフは衣装を派手に汗だくの奮闘.
O’C、精神障害者のメンバ−達は、ふんだんに出るX’mas料理を楽し
みにしている.毎年私は妻と娘の助けを借りて、日本風のカレ−を作るのだ
が、百人を越す参加者を数人のスタッフと私、妻、娘の手を借りても準備か
ら終演まで戦争状態.
「今年は少し楽にやろう」と集議一決、レストランで.
だが、何処の、どんなレストランに、そして受け入れてくれる所が有るのか、
と頭を悩ました.予算だって贅沢は出来ない.私の僅かな寄付なんて役にも
立たない.でも、X’masらしく楽しませて上げたい気持ちを込め、O’C
ではNorthbridgeの街外れに有る、小さなレストランに協力をお
願いした.
メンバ−みんなが十分楽しみ、喜ぶ姿はO’Cを支えるスタッフ全員の心を
熱く満たした.店の規模、内装の不満なんか問題ではない.協力してくれた
レストランの全員が、ボランティアの優しい気持ちで接してくれ、涙が出る
ほど嬉しく、感動した.
「こんな事で感動?」
そう、私のボランティアは、こんな小さな小さな触れ合いの喜びに支えられ
て、また、明日のボランティアに繋がる.
Mercy Care、何と二百人ものボランティアが集まり、大講堂で盛
大なX’mas&Thanks Partyが行なわれた.
病院と老人ホ−ムの厨房から本職のシェフが来て、丸ごとタ−キ−、ロ−ス
トポ−ク等、そんじょそこらのホテルより豪華、そしてふんだんに用意され
た料理.その上、ビ−ル、ワイン、シャンペンとアルコ−ルの飲み放題.
全員飲酒運転.それで良いのかいな.
それにしても裕福、金持ちの所だ.ここでボランティアを始めてから何とな
く雰囲気に余裕を感じていたが、何だかこの先が楽しみになる.
ここでケア−を受けている人達は幸せだ.O’Cでやりくりに苦労しながら、
精神障害者のメンバ−達を支えているオ−ナ−やスタッフの顔がちらつく.
十七日には日本人コ−ラスグル−プ「コ−ルなでしこ」が慰問に来てくれ、
晴れやかに楽しむ年寄りの姿に心が和む.
「変化の少ない毎日の生活、年寄りにはとても良かった時間.有り難う.
次回の予約をしたい」とボスに言われ、私も嬉しい感動を得た.
協力してくれた妻とコ−ルなでしこに純粋に感謝したい.
提督、知事主催のインタナショナル ボランティアディ−、
Blind Centre等の招待には、上記のパ−ティと重なり出席出来
なかったが、現場のボランティアパ−ティの中で、多くの感動と楽しさを得
た一瞬に私自身の心の存在を感じ、小さくも有り大きくも有る幸せな満足感.
一年の終わりに近ずいても振り返ることの無い私のボランティア.
又、来年も変わることが無い淡々とした私のボランティア.
「ぼけ防止と健康維持のために」有る様な私のボランティア.
ウエスタン オ−ストラリアのニュ−スペ−パ−に奇特な日本人が写真入り
で記載された.Headingだけでも紹介しよう.
$1、5m pledge to WA blind sets example.
Dr Handa;More than $10m donated to
WA causes.
Blindに関係してボランティアをしている「日本人」の私は、
「すごいじゃん」思わず叫んでしまう.
ボランティアに関わる日本人が少ないと言われる中での、快挙?なニュ−ス.
Have a wonderful Christmas
and Happy New Year.
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