私のボランティアNO25
(優しく有りたい、でも難しい) 広瀬寿武
「優しい」
人に優しく、命有るものに優しく、相対する物に優しく.
日々の生活の中で余りにも多く耳にするため、意味に重さを感じなくなてし
まった言葉の一つ.
裏を返せば、我々人間にとって「優しい」と言う感情を持ち続ける事の難し
さを示している様に思う.
我々人間と書けば誤解をまねく恐れが有るので、弱体精神の持ち主と人々か
ら批判を浴びている、凡凡人の私には至難の言葉だ.
CF、朝8時10分Drのアポイント.7時40分家を出る.
午前中、8人の送迎.20〜30分の距離を安全運転と患者の病状に神経を
集中して、ボランティアル−ムに立ち寄る暇も無い、蜻蛉返りの忙しさ.
気紛れな雨模様の天候に私自身の気持ちにも憂鬱が蔓延る.
11時20分RPHに送る2人を乗せて居る所え、さっき連れ帰ったG婦人
が「トシ、Subのス−パ−まで乗せてくれ」「OK」Subの近くの病院
から一人拾う序でに回って行ける.
ス−パ−の前で下ろすと「トシ、何処で待てば良いか、何時迎えに来てくれ
るのか」
私は頭の回線がショ−トしそうなくらいの勢いで状況を考えた.あっちでも
こっちでも私の車の来るのを待っている.昼飯の時間が無いのは何時もの事
だが、待ち人(患者)の予定を考えるとそちらを優先したい.だが、G婦人
の迎えが絶対出来ない分けでもない.ここで私の人間的な出来損ないが明白
なった.「G、申し訳ないがタクシ−で帰ってくれないか」G婦人は無言で
車を離れて行った.RPHに着く間、後悔がちくちくと私の気持ちを刺す.
「30分待てくれたら迎えに行けたかも知れない」
それから4時間の忙しい間も気になって気になって!患者を拾い、送り、送
り、拾う度に「こんなに忙しいのだから仕方がなかった」私自身への言い訳
で後悔を慰めては見るが、心は晴れない.
Gはポ−トヘッドランドから車で2時間も中に入った小さな町から(名前を
聞いたが忘れた)治療のため7週間CFのロッジに泊まっている.ガンの不
安と一人で向き合い苦しい思いをしているだろうと思うと「優しい」感情が
私の心に宿ってくれなかった一瞬が悔やまれてならない.
4時に終わり家に帰った.「どうしたの、何か有ったの?」妻に心の内を見
せたくない、恥ずかしさ.
深夜も雨風が庭のパ−ムツリ−をざわつかせている.眠れないのはその
「せい」ではない.
「優しく」有り続ける難しさと私の心の貧弱さ、こんな私がボランティア行
為をしている.
偽善ではないかと真意を考えると、頭が冴え、見据える闇の向こうに嘲笑う
影が浮かぶ.
FC.ガン患者をサポ−トする公益法人.会長は時のヘルスミニスタ−.
約280人のボランティアが夫々の責任を果たしている.
RPH.ロイヤルパ−スホスピタル.WAで一番大きな公共病院.
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