私のボランティア NO19 広瀬 寿武
(興味と欲望に支えられ)
毎回のボランティアから数限りなく教わる事が有り,その為に私自身も努
力する.その努力が私なりに納得出来れば,ボランティアが有意義で楽しい.
人間の心は趣味(興味)と欲望で動く.興味を持てばそれを満たす思いが沸
く.特に単純馬鹿な私は心理学的理屈を抜きにして,Interestは重
要な要素になり,Desireを引き出す.
ボランティアに於てその興味はコミニケ−ションに有る.
O’C(精神障害者,精神病患者のサポ−トセンタ−)で多種多様なメンバ−
と出会う.
混乱するル−マニヤからコソボへ逃れ,又困難を乗り越えてオ−ストラリア
まで来たP.
今注目のイラクで十年近く,Oil関係の仕事をしていたD.
中東の歴史を大学で研究,調査をしていたS.
Shakespeareを初め英国文学に精通する,ケンブリッジ大出のM.
心理学者のR.画家のE.あげれば切りが無い.だが,彼等は精神障害者と
してO’Cのメンバ−.
彼等の一日はTVのニュ−スから始まり,半日掛かりで新聞雑誌を読み,そ
の情報のを主体に自分の意見を主張する.白熱してエキサイトするのをソ−
シャルワ−カ−が上手く纏める.だが,聞いていると実に面白く興味をそそ
る.「トシの考えは?」このボランティアを始めた頃は日本のニュ−スから,
日本的な思考で組み立てた意見を良としていた.それ以上に日本語以外で理
解した思考を英語で微妙に表現する能力が無い.それでは時間が空しく過ぎ
るだけだ.この国で生活をし,この国の人達の為に何かをしようとしながら,
一義に日本のニュ−ス,インホメ−ション,日本的考えに拘わる.それはそ
れで理解を高める方法の一つだが,主体的にはやはり当地の新聞,ニュ−ス
等をより身近にして,ヨ−ロッパ的な思考を理解する努力が必要だ.
新聞は百ぺ−ジも有る分厚い物.今までは指がインクで黒くなるのを気にし
ながら,主にタイトルを拾っていたが,話題になりそうな所は丁寧に読み,
言葉の表現を何度も頭に叩き込む.それでも忘れる.
だが彼等とのディスカッションに参加できる喜びは次の欲望を育む.
そうしてからの三年は今までの十年にも勝る有意義な時を感じる.
これもボランティアとの出会いだと思えば感謝をしなくてはなるまい.
考えて見れば私の日常生活の中で,家族との生活時間を除けば,遊びも旅行
も仕事も,妻に知られたくない悪遊びも,その殆どが英語を共通語とする人
との付き合いだが,私の培ってきたノウハウで結構楽しく,我儘を通して来
た.きっと友人達が「我慢」と「忍耐」を十分持ち合わせていたのだろう.
だがボランティアは私自身が色んな意味で努力をしなければ,奉仕する楽し
さを見いだせない.
この努力はCF(ガン患者をサポ−トする公的法人)でのボランティアの場
でも役にたち,患者の沈みがちな重い気持ちでの送迎に話題を増やしている.
O’Cの特殊な環境にはなかなかボランティアは集まらない.
この三年の間に長くて半年,短くは二週間,数人の出入りは有ったが,今現
在は私一人.
CFで三年続いているのも私だけ.
予約を取り待っている患者を,病院へ送迎をするドライバ−は一日一人と言
う現状の中で,突然も含めて自分の身の自由が効かない.
ボランティアを希望する人の多くが,自分の生活のリズムを優先するのは当
たり前の事.だから必然的に「今日は都合が悪いから」と断れない様な厳し
いボランティア,環境が特殊なボランティアは敬遠され,来ても直ぐ止めて
しまう.どうして私は貧乏くじを引いてしまったのかと,腹の中で小言を言
っていた時期はもう過ぎてしまった.
自分の仕事なら甘えも,怠けも我儘も出来るが,私のボランティアは一にも
二にも自分を律しなければ続けていけない.
いつまで続けられるか?
今はまだ興味と欲望に支えられ努力する楽しさが有り,毎週毎週,時には週
四回,太鼓腹を景気よく叩いて「行って来るよ」朝の八時,無償無料奉仕の
出勤?
今年も12月,一年無事に勤めが出来た.又来年になるなア−
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