私のボランティア NO15 広瀬寿武
(ル−ルは有るんだが)
O’Cでのアウトドア− アクティブティは色んな事をする.楽しみにし
ているのはメンバ−ばかりではない、私もSWと計画を練るのが面白い.
その日は雨雲が行ったり来たりする落ち着かない空模様.
インドア−ゴ−カ−ト場の駐車場に十時前、まだオ−プンしていない中を
待ち遠しいと、額を押し当て覗く.私も初めての経験、何となく浮き立つの
で気持ちは分かるが「本当に大丈夫なのかな?」と.車の免許を持っている
が、現在は停止されているか又は無免許.だが、車を運転したくてうずうず
して「オモチャ」に早く触れたい気持ちが伝わって来る.大人子供の表情を
素直に見せる彼等にアウトドア−の意義を感じる.精神障害者と言う言葉に
は偏見差別を感じるが、三年も身近にいると「病名」を持つ人間社会の仲間
と、お互いを理解いし合っている.
もし私がこのボランティアに近づかなかったら、この自然の理解が持てただ
ろうか.頭の中で「見せかけの理解」をして、理解者だと偽善ぶっていたの
ではないだろうか.彼等も人間社会のル−ルを、共に作り上げていく一員で
有ることに間違いないのだが.
理解すると言うに易いが、本質では簡単ではない.O’Cは精神障害者と言
う韻の持つ差別偏見を無視して、堂々とその名を使い、人間社会の一員で有
ることを互いに理解し合えるように、環境をリハビリする役目を果たしてい
るように感じる.差別偏見は人間の持つ煩悩、避けて通れないのなら、その
接点に触れれば良い.メンバ−の持つ偏見と回りの差別が融合すて何かが見
つかる.
理解の始まる瞬間、今日も彼等の純粋な笑顔が回りの人達を少しでも理解さ
せれば、私も豊かな気分になれる.
百二十kgも有るEに声を掛ける.
「重すぎてカ−トが走らないよ」「トシ、俺とチ−ムを組もう」「やだよ」
日本の事を思う.無知識な私が言うのは無責任だが、同じ病名を持つ人々が、
社会環境の中で自然な接点を違和感無く持てるのだろうか.
疎外された中では「理解」なんか見出し様がない.病気を持つ人達だって檻の
中では、人間生活の自然なリハビリが出来ない.人間環境の改革は多くの要素
が関わり困難を極めるが、ここオ−ストラリアで、人間の為の人間社会を身近
に感じるのは、何処が違うのか.
私はこのボランティアから人間である安心感を教えられている.
ごうごうと耳を苛む轟音の中で「ガチャン」「ドカン」激突の音.
業を煮やした会場スタッフ「ブ−シェット!ル−ルを守れ!」
その怒鳴り声なんか何のその!「ガチャン」「ドカン」
「ル−ルね」可笑しくて可笑しくて、回り中が爆笑.
何時ぶつかって来るかと心配でおちおち走ってはいられなかったのが、正直
な感想.でも会場の人達、メンバ−共々に変な応援心が通じて、人間の繋が
りを優しく感じ、理解の色が僅かでも滲んで見えた.
人と人との間を埋めるル−ルは異なもの味なもの.
(SW ソ−シャルワ−カ−)
(O’C 精神障害を持つ人達のケアンタ−)
先週O’C=June O’Connor Centre(Inc)の
Annual meetingが開かれ私もボランティアの代表として招か
れ、退屈な二時間を我慢した.Committee Members、WA
の役人、Volunteer Centreの代表等々.欠伸も出来ない.
今回で三回目の出席だが、これもボランティアの一部と覚悟を決め、
部厚いReportのぺ−ジを捲る.
なんとO’Cに来たメンバ−は一年間で延べ人数9000人.
ケアスタッフ4人、ボランティア(含むテンポラリ−)4人.
忙しいわけだよ.私は週1だがスタッフは大変だ.何時だったか、遊ぶ時間
が欲しくなり「辞めようかな」と軽口を.
「トシに辞められたら困る」お世辞を言ってと思っていたが、これでは辞め
られない.辞めるタイミングが何時来るか?
Financial Report(決算書)
金額を書く訳にはいかないが、決して多額の、いや、逆にたったこれだけの
予算で、これだけのサポ−ト事業を「良くやるな」と感心したのが実感.
Committee、Staffのボランティア精神が無ければ出来ない.
予算の殆どを寄付に頼る.PATRONのO’Connorさんが殆どを、
市、奇特な人等、「もっと良いサポ−トをしたいが、予算が十分ではなく
メンバ−の皆さんには申し訳ない」と締め括る.
「貴方も遊ぶお金が有ったら、もっと寄付をしたら!」妻の言に反論.
「俺は心と身体でボランティアをしているんだから」と.一寸空しいい響き.
レポ−トの中に私の名前でVolunteer impressionが、
記載され、冷やかされて照れるひとこま.
行きがかりで始めたボランティア、今でも生き甲斐だなんて思った事は無
い.辞められるものなら辞めたいが.
だけど、だけど、その日が来ると嫌だと思わず、私を待ってくれる人達の所
へ、いそいそと出掛ける.
身体に染みついたみたいな気がして、時折、一人苦笑する.
ロイアルショウが近づいた.迷い大人を出さない様に、気を遣おう!?!
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