私のボランティアNO108 広瀬寿武
(気持ちの奮闘)
今年は何時もの年より雨の日が多い様に思える。
JO’Cでは毎年、この時期、キングスパークを散歩、ワイルドフラワーの鑑賞と洒落るのだが、今年は雨空模様に左右され、屋内でのゲームや雑談でメンバー達も飽きるのか、気が滅入るのか、落ち着かない。
毎週、私のボランティア日は水曜日。ここの所、ほぼ毎週雨。
「よし、来週はトシがシェフをやろう」と、メンバーを笑わせる。
スタッフが「トシ、マーボー豆腐を作ってくれ」と。
そんな訳で「マーボー豆腐」に挑戦するための準備が始まった。
約40人分。
PCで作り方をコピー、それを見せながら「女房」に教えを請う。
2~3人分はレスピーなんか要らないが、40人分となると「インスタントの料理」とは行かない。
まず、予算:市販のインスタント用は高額になる。
調理器具:5人分のなべで数回に分けての調理。
助手:スタッフには(調理の方法も日本食料理の内容も知らない)期待出来ない。
マーボー豆腐:豆腐とその味がメンバーに好まれるか?辛さは控えめ。
女房先生の指示で買い物:牛のひき肉、ねぎ、後は家に有るもので間に合わせる。
料理の手順を頭に入れ、さて、当日。朝10時スタート。
米(ロングライス)を磨ぎ、20人分の鍋二つをガスにかける。
上手く炊けないと困るので、水を多めに。生より良い。
豆腐を熱湯で軽く湯通し。バケツ一杯分くらいに膨らんで
「はて、どうしたものか?」と第一の悩み。
ねぎ一束、細かく刻み、しょうがとにんにくは市販のビンの物。
女房「本当は鶏がらスープなんか使えば良いが」と。
市販の鳥スープの素を溶かす。
中華なべをガスコンロにと、気が焦り始め、教えてもらった種種の順序、味付けが、ちぐはぐになる。
兎に角、4~5人分の分量ですら、やる度に違うのだから、味だって当然違う。
大きなガスオーブン用の入れ物に移し、オーブンで冷めない様に。
このように書くと簡単なように感じるが、どうしてどうして、炒めた肉と豆腐を混ぜるのは、私に取って至難の業。豆腐が崩れ形が無くなる。
家で試した2人分の量を料理するのとでは、大きな違いがある。
約8回に分け完了したが、味の調整が必要。
醤油と豆板醤、ほんの少しの味噌(女房のアイデア)。
二つの入れ物の味に違いが有るが、まあいいや、と妥協か諦めか。
11時50分完了。
メンバーから「これはチーズか?」「チーズの味が違うが、日本製か?」
料理内容の話題はメンバーの憂鬱な一時を明るくした。
彼等の殆どが、残さず食べた。
当然の事だが、女房の言うような料理なんか出来るはずがない。
私の料理の美味さ、不味さは2の次と思っての、奮闘。
疲れたのが本音。マーボー豆腐の料理は当分食べたくない。
「トシ、ビュティフルだ!」「来週は何だ?」「美味かった」
女房にほんの少し、味見をしてもらう。
「まあまあね」
「でも、貴方の気持ちは十分伝わる出来栄えよ」
食文化は生活文化を正しく反映していると感じる。
JO’Cのメンバーは全員生活保護費を受けているが、十分ではないのは確かだ。
しかし、JO’Cと言う場所が有って幸せだと思う。
十数年、オーストラリアの「福祉」の一環に携わって感じる。
JO’C 精神障害者のデイケアーセンター(法人)
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