私のボランティアNO 107 広瀬寿武
(楽しむ思いは、みんな同じ)

白内障の手術は実に簡単に終わったと思っていたが、片目は5週間過ぎても
ガーゼを通して見ている様な常態が続き、もしかして失敗が確実ではないかと不安になり、検査を申し出た。
「2週間ほど様子をみて処置を考えよう」と。冗談ではないよ!
2週間したら妻と共にホリディに行くための、全ての予約は完了済み。
「じゃ、帰って来たら、9月の初旬に。それまで処置薬を出す」

年間、数回、友人と共に友人達の故国に海外旅行をするが、妻と2人の旅行は何年振りかと思いをめぐらす程、久振りになる。
ちょうど、JO’Cもリノベエーションが未完了、ブラインドゴルフでは他の
パートナーのキャディが数週の休みを取った穴を、私が2人分のキャディを同時に行い、代わりをしたため、そのキャディに今度は私のMのキャディを
御願い出来、気兼ねなく「休暇だよ!」とMと役員に申し出た。
そのM、「私もバリ島に1週間行くよ、子供達が81歳の記念に連れて行ってくれる」
それはそれは、うれしさを満面に色々説明する。
ブラインドクラブの仲間達も旅行の話は「話題」の一つとして、ゴルフの後のコーヒータイムで花が咲く。
「豪華客船で3週間、東南アジアを回って来た」
「イタリーとグリースで美味い物を食べて来た」
「オランダでの花園の香り、花びらのやわらかさを感じて来た」
みんなヘルプが必要な盲目の人達。
私の友人に「盲人が旅行を楽しむ」話をすると
「目が見えないのに何が楽しいのか?」と、実に単純な疑問を持つ。
言われてみれば「健常者の疑問」として当然かも。
長い年月、10数年間、精神障害者、老人ホーム、がん患者、そして盲人達と共に接して、側に、目の中に、気持ちの中に、当たり前の様に「この人達」が居る、そして「私」が当たり前の様に居る。
こんな日常の中で、一般的な健常者の持つ疑問は、私の疑問ではなくなっていた。
旅行の楽しみは「見る」そして聞く、味わう、感じながら、種種の事に興味を広げる事も沢山有ろうと思う。
盲人は、先ず見る事の出来ない旅先をどの様に感じるのだろうか?
何が楽しいのか?
「目が見えないのにゴルフの何が楽しいんだ?」と同じ疑問。

ブラインドゴルフでは盲目のプレイヤーの手を引き、目になり、足になり、
そして大事な事は「心」になるのがキャディの役。
キャディに、この心を感じる気持ちが無ければ、楽しいゴルフは出来ない事が長年の経験で少しだけ理解出来るようになった。
だから一般の人が理解できないのは当然だが、しかし「不思議」に思うだろ。

理屈は抜きに感覚で説明すると。
「楽しく、愉快な心は我々、健常者と同じなんです。ただ、目が見えないだけです。感じます。匂いも触覚も知覚も聴覚も。だから旅行するのが楽しみなんです」

私はMと互いの旅の話をしたいと次の金曜日を楽しみにしている。
妻との旅はマレーシア、Langkwi島、のんびりと過ごしながら
「Mはバリ島でどんな楽しみ方をしているかな」と、意味も無く笑いたくなった。

 JO’C:(法人組織)精神障害者のデイケアーセンター



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