私のボランティアNO105   広瀬寿武
     (頼り頼られ)

75歳にもなると体の部分に病みが巣を食う。
奥歯に虫が巣を作り、病んだ歯をペンチごとき器具で引き抜く、あの痛さ。
大分前からPCに1~2時間向かっていると、字や画面がぼけたり、ダブって見えたり、その内に霞んでしまう。
「白内障だから手術をしよう」とDr、いとも簡単に言ってくれる。
手術と聞いただけで震えか来る小心者。だが意を決して「右目」から。
手術自体、痛くも無く知らぬ間に終わってしまったが、数週間経っても違和感があり再度Drへ。目薬の所為にして薬を変えたが、内心「手術の失敗ではないか」と心配しながらのまた、数週間。
何とか落ち着いたが片目が良く、片目が暗いと言う「ちぐはぐ状態」に、やはりPC作業は負担を感じる。
「左目」の手術は7月。

ボランティアは大して支障は無いので1日だけ(JO’C)休み、ブラインドゴルフのサポートには何時もより注意し事故の無い様に集中した。
最近のブラインドゴルフではMs Bとの相性が完全に融合したのか、毎週のように優勝か準優勝。
3番のウッドで100m内外の距離、グリーンの10m前後はパター。
80歳のお婆ちゃん、失礼は承知だがオージー骨格の体型で、手を引く私にぶつかりながら肩を揺すって歩く、無理にクラブを振るわけではないのでウッドやアイアンでのミスは少ないが、パターは大変に難しい。
方向はキャディの私がBの癖に合わせ立たせるが、距離感はキャディの感覚では想像できない。盲人になる前にゴルフ歴が有ればまた別だが、
Bは初めて6年と。
私でも(目明きです、経験も多少なり)距離はなかなか合わないのに、
盲人はパターを打つ瞬間の手首の感覚だけでテークバックをするのだから、
距離が短く(20cm)ても、長く(3m上)ても、距離に関係なく、難しい。かえって距離の長い方がホールインする率は高い。
長い間、盲人ゴルフのキャディ経験でパターの確率を高める方法を考えて来たが、方法なんか無い事に気が付いた。
盲人(B)と私の間では理解する事の出来ない壁が有る。
盲目でない、盲目の経験も無い私が解る訳がない盲人の体感、感覚、知覚。
「白内障」の術後、たった1日だけだが、片目の不便を感じた。
両目が見えない盲人は「不便」ではない。じゃ何だ。「見えない」って何だ。
理屈や理論の範囲ではない。見えないのだ。
私は目が見えない盲人のサポートをしている。私の出来る範囲で。
でも、来週も勝たせて上げたいが、ゴルフをするのは私ではなく、Bのゴルフをする。
Bはトシに頼ってプレイをするのが楽しいと言う。
頼られているキャディと思えば私も楽しくB の気持ちを頼る。
「これでもボランティアなのか」と擽ったくなる。


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