私のボランティア NO 10              広瀬寿武

 

 暑い暑い日々が続く二月六日、O’Cではメンバ−約五十人を連れてロットネスへ.

毎月一度の特別な野外活動が第四週めの水曜日と、大体決められている.

毎週、水曜には十一月から泳いだり砂浜の散歩?と水遊びを続けている.

だが、今月は私が四週間の休みを取るので六日になった.

「私がいなくても良いじゃないか」

「いや、トシがいなければつまらないよと皆が言うから」

煽ててはいるが、本音は違う.

ソ−シャルワ−カ−が楽しみたいからと言ったら怒るかな!

 

船は以外と空いていたので安心して彼らの自由に任せていた.波もない静かな海、私も

少しは楽しめるかな、と、僅かな期待.

 

島でランチと飲み物を仕入れ、二人の女性ワ−カ−に十数人、比較的健康な数人、私が

十三人とグル−プに別れ行動開始.

私は皆の希望に従いバスで適当なビ−チへ向かう.だが下りる場所が決まらずバスの中

でわいわい、がやがや、他の客に迷惑を掛ける.私自身が適当な場所すら知らないのだ

から途方にくれていると、同情してくれたのか側にいた老夫婦が「次が良いビ−チだよ」

とそっと教えてくれた.

「よし、次、下りるぞ!」

下りるにも時間が掛かる.同乗している客の優しく見守る目に心から感謝する一瞬.

窓の向こうで手をふる姿が見え、私も手をふる、皆の気持ちを代弁して「有り難う」

このボランティアをやりながら、彼らとの間に違和感を感じない.共に歩き、笑い、

食べる一体感に楽しさを覚える仲間.私の仲間に優しく、時には辛抱してくれる場面

に感動する.今日も「感動を有り難う」と一杯胸に溜め、底まで見せる海に汗まみれ

の身体を沈める.二時間と言う時間は彼らには長いのか.うろうろする姿を追いなが

ら私自身の楽しみはお預け.それでも暑さに我慢が出来なく水に浸かる皆と水遊び.

 

ジェティ−に戻り時間をつぶす.暑い、喉は乾く、彼らの不満にてんやわんや.

私だって暑さにくたくた.「暑い!」彼らも「あつい!」と真似る.

最近、私の日本語に慣れたのか、よく真似をするので時折、日本語を使う.

「大変ですね、ご苦労さんです」と数人の日本人に声を掛けられびっくりしていると、

「トシの知り合いか?」とMが.

日本語の真似が聞こえたのか、同胞が私の行為に声を掛けてくれた.

「有り難う、旅行、楽しんで下さい」清々しく答える.

私と私の仲間の事が地球の何処かで話題になるとしたら、人生のたった一コマに意義を

感じる.字では幾らでも美辞麗句を並べられるが、私のボランティアの中で感じるこの

感覚を字にするのはもったいない.字にしたら儚く消えてしまいそう.

あんなこんな息遣いが人と人との間を通り抜けて行く、ごく自然に.

ボランティアにそんな言いようのない輝きを感じ感謝したくなると言ったら笑うか? 

 

 (O’Cは精神障害を抱える人達のディケアセンタ−)


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